
このあたりに不思議な洞窟が密集していると聞いてやってきました。

振り返るとさっそく、港に面した斜面に洞窟がありました。

古い手掘りの洞窟です。奥行きは10mほどです。
天井にはつっかえ棒がしてあって、漁業関係者のものと思われるものがおいてあります。

すぐ左隣にも、同じような手掘りの洞窟がありました。

こちらには落ち葉やペットボトルなどのごみがちらかっています。

その左には港に伸びる堤防が崖にくっつく形で始まっています。
港の護岸と、この堤防によって、2つの洞窟は海水に晒されることがなくなって久しいようでした。
堤防の向う側は砂浜になっていて、ちょっと見えていますが隣りにまだ洞窟があるようです。
それがこれですね。

といいつつも…、
堤防に登った瞬間に、想像以上の景色が目に飛び込んできました!

これを見てもまだ何が想像以上かわかりにくいと思いますので、堤防上を沖に向かって歩いてみましょう。
グレースはそこで待っててね。

グレースの目の前の洞窟に続いて、

海に向かって突き出た崖に、等間隔にさらに3つの洞窟が並んでいます。

それらはエメラルドグリーンの海面のわずか数10センチという絶妙な高さに開口しています。

先に見たものを含め、計7つの謎の手掘りの洞窟。
これらは戦争末期に作られた特攻艇・震洋がおさめられていたものだったのです。
震洋の詳しい説明はこちらに譲り、割愛しますが、ベニヤ製の粗末なボートだったそうです。
ここ手石には軍港・下田を守るために、第51震洋隊が配備されたという記録があります。
さて、グレースの待つ砂浜上の洞窟から、4つを順番に見ていきましょう。

手掘りの荒々しい壁面とは対照的に、床面は丁寧に平たく作られていますね。

奥行きはやはり10mくらいです。

ミルクも合流して、海面上に浮かぶ3つの洞窟探索に移ります。

1つ目。

満潮時に海水がゴミを連れ去るからか、内部はきれいです。ほんの少し左に曲がっています。

岩の割れ目を飛び越えて2つ目に行きます。緑色のとこは滑るので注意が必要です。


>ここが2つ目の入り口だよ

ふむふむ。

同じように内部はきれいで、今度は右に少し曲がっています。

入り口にはボートを係留するためのものでしょうか、金具が残っています。

少しだけ残ったワイヤーが何かを訴えているような気がします。

>たいへんです、壁になにか書いてありますよ!
>えっ!?

なんと、そこには達筆な字で4名の人名が刻んでありました。

この4つの穴のなかで出撃を待っていた兵士の方々の名前でしょうか、
丁寧に刻み込まれた文字のひとつひとつに、いろんな思いが込められているように感じました。
ここに配属された第51震洋隊は、任務の遂行のないまま終戦を迎えたとのことです。
それを知って安堵しましたが、しかしこの文字を刻むときの心境は、想像を絶するものがあります。

気を取り直し、ここに並んだ最後の洞窟に行きましょう。

>わたしがまっさきに行きます!

これが4つ目、いちばん沖側に位置する洞窟です。

これの特徴は、入り口付近左壁の突起、天井側面に穴が並んでいるのと、

両サイドに金具が埋め込まれてロープが渡してあります。

それに、入り口地面にはっきりとした溝があります。

それぞれが何の目的を持っているのか、定かではありませんが、

遺されたこれらのひとつひとつが、現代のわれわれに対して、

何かを一生懸命伝えようとしているように感じました。

洞窟を見ながら岸壁の突端まで来ましたが、向う側にまた小さな入り江が続いているようです。

まだまだ、探索を続けましょう。

(続く)

